#02 甘い罠 ~そのメッセージを目に留めたとき、すべてが変わった~

彩花はいつものようにベッドに横になり、マッチングアプリをぼんやりとスクロールしていた。

スーツ姿でデスクワークをこなす昼間の彼女は、ごく普通の女の子だ。 友達には「真面目でいい子」と言われ、親には「そろそろいい人を見つけなさい」と急かされる。 でも、心の奥底では誰にも言えない想いがくすぶっていた。

「誰かに優しく支配されたい」 「すべてを委ねて、深く愛されたい」 そんな願望を、日常では決して口にしない。

その夜、画面に一通のメッセージが届いた。

【From: 夜の住人】 「君の写真、どこか疲れた目をしているね。  僕がその目を、優しく閉じてあげようか?  逃げられないくらい、甘く。」

彩花の指が止まった。 心臓が、ドクンと大きく鳴る。 不思議なメッセージ。 明らかに普通の出会い系ではない。 怪しい。危ない。 即ブロックすべきだと思ったのに……なぜか指が動かない。

画面を閉じ、スマホを胸に抱えて天井を見つめる。 部屋は白を基調にした清潔な一人暮らしの部屋。 シンプルな白いシーツ、白い壁、柔らかな間接照明。 でも今夜は、どこか空気がざわついている気がした。

「この人、どんな人なんだろう……」 「本当に優しく、ってどういうこと?」

彼女はまだ返信を打たない。 ただ、メッセージを何度も読み返してしまう。 首筋が、なぜか熱を帯びる。 想像してしまう—— 見知らぬ誰かの大きな手に、優しく首を包み込まれる感覚。 逃げられないように、でも痛くなく、甘く固定される感覚。

普通のOLである彼女は、 まだその扉をノックしていない。 でも、心はもう少しだけ、危うい甘さに傾き始めていた。

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