
別れ際の空気は、いつも少しだけ冷たい。
さっきまで触れていたはずの温度が、指先からすり抜けていく。
どうして彼は、こんなにもあっさりと「またね」と言えるのだろう。
その一言で、わたしだけが取り残される。
胸の奥が、じわじわと締めつけられる。
わたしだけが、欲しがっているみたいで。
いっそ――逃げられないようにしてほしい。
どこにも行くなと、命令してほしい。
冷たくてもいい、たまに優しく触れてくれるなら、それだけでいいのに。
そんなこと、言えるはずもなくて。
彩花は、何もなかったみたいに微笑んで、
「またね」と、同じ言葉を返した。